モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 ②図案を起こす

 

東京手描友禅は多くの場合、お客様のご希望に沿って図案からおこす誂え染めです。
特に記念となるような振袖の場合は、そのお客様ならではのご希望が出てまいります。
今回はオリンピックに関連しての制作で、上半身はバラと公国の国旗の色(赤と白)の地色で、裾模様には国花のカンパニュラ王宮が入るというリクエストでした。
一番難しかったのは王宮の作図。


残念ながら行ったことのない国で、ネット検索しても出てくるのは観光写真ばかり。幸いテレビでグレース公妃のテレビドキュメントや、モナコ王室専属シェフの方の仕事を紹介する番組などを見る機会があり、そこに写る王宮を録画しては画像を撮影、参考にさせていただきました。



友禅模様にするのですから、さほど細かく描くわけではないのですが、「この尖がりはいったい何かしら」などと虫メガネ(何てアナログ!)も活躍。
古い部分は中世以来という由緒あるお城だそうです。

写真を拡大しただけですと、お城を模様にした時に形が間延びしてしまうので、特徴を強調して描き直しました。つまりデフォルメ。


カンパニュラは桔梗のことですが、色々な種類があるようでした。


カンパニュラが手前、遠景に王宮のあるお城部分です。
王宮裏手に特徴あるコブ型の岩山があるようだったので、さらに遠景として採用(^^♪

上身頃を彩るのはバラ。


モナコ大公ご夫妻の名前を冠したバラの写真
(こちらはネットで山のよううに検索できました)
ピンクも赤も白と強い対比が特徴で、これも友禅に向くように図案化します。

バラのように表現の仕方に幅があるモチーフは、お客様のご希望はもとより作者の好みも大いに反映されるところだと思います。
今回は「遠くから見てもバラに見える」を最優先にして作図。


上半身のバラの流れはツタでまとめることになり、先にツタの流れを決めます。


後からバラを落とし込んで、作図していきます。
上下に走る直線が生地の縫い目にあたる位置です。


全体の調子が揃うように細かい修正をしながら図案を作り上げていきます。
消しゴムのカスがたくさん写っていて失礼します(^^;)
「誂え」ならでは、です。

このようにお客様の好みに沿って服や靴といった身の回り品を誂えることを、英語ではビスポーク(bespoke)と呼ぶそうですよ。
その意味は、依頼主と製作者がトコトン話し合う、です。
ロンドンのセビルロー通りの紳士服店でスーツを誂えることが、その代表格だとか。

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ぼかし屋の染め風景 | 10:29 PM | comments (x) | trackback (x)

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