ぼかし屋の染め風景

 
 手描友禅の染め風景 シルクオーガンジーのスカーフ

 すっかり秋らしいお天気が続くようになりました。
東京でも紅葉が目に付き始めましたが、
今日ご紹介するのは、ちょっと季節はずれな染め。(^^;)
  最近始めたシルクオーガンジーのスカーフ生地への手描き染めです。
東京手描友禅で本来使用する着物や帯用の絹地と違い、シルクオーガンジーは向こう側が透けて見える薄い生地で、大変張りがあり、スカーフにすると立体感のある形に結べます。



 緑の地染めをぼかし染めしていますが、生地の目が粗いので刷毛でサッとなすっただけで染料がぼけていき、和服用の白生地と違い、霧を吹いたり刷毛で擦ったりする必要がありません。
 あとは無線友禅で模様を染付けます。



 このブログによく登場する染色作業机ですが、いつもと違い机が透けて見えています。

和服地の時と同様に、シルクオーガンジー地を模様伸子に張って作業しています。針のついた竹でピンと張っても大丈夫なのは、薄いといえ絹だから。丈夫なのです。

 お気づきでしょうか。透けて見える伸子針は斜め互い違いにうってあります。
今年8/15の当ブログ「東京手描き友禅の道具、伸子(しんし)」で紹介したように、
通常、伸子は生地の横糸目にそって真っすぐ張ります。しかし生地が薄いとか、張る力を弱くしたいなど必要がある時はこのような打ち方もいたします。
 
 今回は自家用小物の染め紹介でした。(^^;)
ぼかし屋の染め風景 | 11:57 PM | comments (x) | trackback (x)
遊びの染め帯「金のガチョウ」

前回のブログでご案内したしゃれ帯展へ出展中の染め帯のうち、
今年のテーマ「童話」の染め帯を、染め風景とともに紹介いたします。

 「金のガチョウ」から。
前柄は男の子がガチョウを抱いて一人で歩いているところ。


  糸目糊と地染



 お太鼓柄は、大勢の人々が男の子とガチョウにくっついて離れなくなり、
ひっぱられてゾロゾロと歩いているところ。


  色挿し


   おたいこ柄
  男の子、オバサン、兵隊さん、神父様、木こりや娘に子供、最後に猫の行列です。

名古屋帯に仕立てると、男の子がおたいこ柄の上部に、猫が下の方にくる柄行きです。
今回は「子供の絵本の挿絵」を目指して楽しい帯にしてみました。
ぼかし屋の染め風景 | 01:05 AM | comments (x) | trackback (x)
手描き友禅の中でも、糸目糊を使わず水彩画のように筆描きする技法を無線友禅と呼びます。
白生地が濡れた状態で無線描きすると、染料が滲んで柔らかい仕上がりになります。これを濡れ描きとも呼び、薄くふんわりして夏向きです。


   こちらが濡れ描きしているところ。
糸目友禅の振袖や訪問着の雰囲気とはまったく違います。

 霧吹きが写っていますが、生地が乾かないように霧を吹き付けながら、花や葉を描いていきます。ぼんやりした感じを出すことができます。
 この猛暑、何事も少しでも涼しげに。

最近の話題を少々。

その一出光美術館の「田能村竹田展」を観てきました。
末の文人画家ですが、実は知らない名前でした。
ポスターに写る作品の細かい表現に惹かれて行ってみました。



 文人画というとササッと筆を走らせた水墨画というイメージがあります。そういう作もありましたが、こんな細かい画も!


   梅花書屋図(部分)

 塀の積み石から梅の老木の表現まで、本当に細かい水墨画でした。



この蘭の画はいかにも文人画という感じですが、蘭の描き方は可愛らしい感じで、画面に蘭で流れを作っているところが、着物の模様のようでした。

一番気に入ったのはこちら。


   目撃佳趣画冊(部分)

 この題は「よい趣の風景を観てスケッチした」という意味だそうです。
田能村竹田は、漢詩人、歴史家の頼山陽と親交があり、この画冊は一緒にスケッチ旅行をした時に描いた画をまとめたもの。つまりスケッチブックというわけ。
 この川辺の画はその中の一点です。川面をおおう葦が細かく柔らかく、
小さい作なので、かがみ込んで観ましたら、色も使い分けて描かれていました。
涼しそうな画なので、よけい気に入ったのかもしれません。(^^;)
添えられた漢詩を読む教養がなく残念でした。

 出光美術館はお茶の無料サービスがあり、鑑賞の途中で一服することができます。休憩所からは皇居のお堀が眺められて、冷たいお茶を片手にゆっくり座ることもできます。
 よい美術館です!

その二、この夏のよもやま話。

 今日、8月9日は長崎の原爆記念日。
先立つ8月6日には映画「黒い雨」の放送がありました。井伏鱒二原作のこの映画はご存じの方も多いことでしょう。爆撃直後の広島を逃げ歩いた主人公(演じるのは元キャンディーズの田中好子さん)が何年も経ってから原爆症に罹って亡くなってしまうお話です。
 毎年この時期になると放送されます。観るべきだ、と思いつつも、明るい気持ちになる映画でない事はあきらかなので、いつも先送りしてきました。
でも戦後70年、実は「戦前」なのでは…という不安の絶えない今年の夏ですから、思い切ってテレビの前に座りました。
 被ばくの恐ろしさは勿論ですが、爆撃直後の広島市内を再現した映像はショックでした。考えてみれば、東京下町の空襲を逃げ延びた両親(当時中学生)から、聞かされ続けた情景と似ているのでした。「アメリカのB29が空いっぱいに飛んできてね」と聞かされて育った私は、空襲の恐ろしさについて「知っている方だ」と思ってきました。でも、この映画を見ますと、「両親が見たのは、これほどの惨状だったのか…」と今さらながらに思い…何とも言えない気持ちでした。
どのようだったか、なぜそうなったのか。
忘れてはいけない事、知るべき事、伝えなくてはならない事が沢山たくさんありますね……。
ぼかし屋の染め風景 | 09:09 PM | comments (x) | trackback (x)

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