東京手描友禅、訪問着の染め風景

 
今回の染芸展出品作の染め風景(一部)をご紹介します。
あじさい模様の訪問着です。



  色の準備

  花の部分から先に色挿し

  糸目糊がよく見える写真になりました。




  葉の部分の色のラインナップ。
微妙な色の違いを組み合わせて濃淡ぼかしを多用します。





総絵羽(裾模様、上半身、袖すべて縫い目を越えて模様が連続すること)なので、作業の途中で模様と色のつながりを確認しながら色挿ししていきます。


  色差し終了。並べて全体の色合いの確認。
色挿しは時間がかかります。そのため途中で乾燥によって染料の濃度が上がると、色が思いがけず濃くなってしまいます。調整のため染料に水を足しながら色挿しするのですが、それはそれで!「水が多すぎて色は薄くなる」危険と背中合わせ。
濃いも薄いもツドツド確認、最後にまた確認。色合いに違いが出た場合は、この段階で調整します。



 濃い部分から順に地染め


今回は五寸刷毛以外に小さい丸刷毛も利用してを思わせるぼかし表現にしました。


 染め作業が終了した直後
色全体を確認してから、次の工程へ。
蒸し、糸目落とし、水洗い(水もと)、湯のしへ進みます。
ぼかし屋では京都の丸京染色さんへ依頼しています。


 ぼかし屋がボ~っと思いますに…
この状態の手描友禅の生地は、フノリを掛けられ、伸子や引手で引っ張られ、蒸気を浴びせられ、染料をかぶって、もうゴワゴワです。
それが丸京さんから帰ってきた生地は、真っすぐ、フワフワで光沢を放つ絹に戻っているのです。
絹…すごい材料です。


2/8追記
丸京さんから湯のしまで終えて帰ってきた生地を衣桁にかけて、染め上がりの最終チェックをしています。


染めムラがないか、※絵羽の部分の色が合っているか、などなど。

色もよく合い、ズレもないようです。(^^)/


 丸京さんの洗いで糸目糊が落ちているのがご覧になれると思います。


糊がとれると友禅模様の糸目が白く浮き上がり、サッパリと明るくなります。
染色作業の嵐をくぐった絹は、最初の白生地の時と同じように柔らかい光沢のある生地に戻りました。

 生地を剥ぎ合せて反物状にして染色作業してきましたが、このチェックが済むと解いて(衿と衽を離して)※上げ絵羽仕立てに進みます。

※絵羽
縫い目を越えて模様がつながっていること。
裾模様はもちろん衿、胸、袖の模様もつながっている柄行きは、振袖や訪問着などに多く見られます。
絵羽については、下記に詳しく載せています。

当ブログのカテゴリー「東京手描友禅 模様のお話」
https://www.bokashiya.com/blog/c7-.html
2014/4/9「東京手描友禅-模様の参考に。絵羽模様」

※上げ絵羽仕立て
展示用の仕立て方のこと。本当に着用するのではなく、柄の位置や出来上がりを見る、見せるためのものです。衿肩開きを切らずに衿付けをします。
 よく似た言葉に「仮絵羽仕立て」があります。
染める前の真っ白の生地をサイズに合わせて裁ち切り、着物の形に仮仕立てすること。
そこに下絵を描いてから解き、反物の状態に戻してから染色作業します。
友禅の「誂え染め」には欠かせない工程です。


ぼかし屋の染め風景 | 06:01 PM | comments (x) | trackback (x)

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