古い友禅染、夏の帷子

 
上野の東京国立博物館で今おもしろい企画展示をしています。

「屏風と遊ぶ」 
9/3まで


 長谷川等伯の「松林図屏風」大きなスクリーンに映像化されていて、ゆっくり座って楽しめるのです。


自分が鳥になって松林を見下ろしているような、木々の間を飛んで抜けていくような、
不思議な感覚を味わえます。
 所用時間は「好きなだけ」 映像のワンサイクルは10分程度ですが、間近で見ても、遠目に見ても面白いので、ゆっくり30分位見てみるとよさそうです。
松林図屏風からこのような映像を生み出すコンピューターグラフィックスの技術者を
羨やましく思いました。
 別会場で光琳の「群鶴図屏風」も取り上げられています。


さて今回の常設展示では季節柄、友禅染の帷子(かたびら)を見ることが出来ました。
大変古い作例もありました。
(写真横転、ご容赦を)

 波に千鳥草花模様 帷子 江戸時代18世紀 

 裏地をつけない夏向け仕立ての着物を単衣(ひとえ)と呼び、そのうち麻布で作られたものを帷子と言います。ちなみに蒸し風呂などの入浴用の帷子が湯帷子(ゆかたびら)で、浴衣(ゆかた)の語源です。
 ここで紹介しているのは、夏の外出着の帷子です。
 

 布を染めるのに、糊がついている所には染料が入らない、という
友禅染のソモソモの原理が大変よく分かる初期の素朴な友禅染です。


 葉や茎は糊で描き、糊防染でいったん茶に染め、後から絞り染めで青色を染めたように見えます。
特に菊の中心は目が粗いながらも鹿の子のように絞って青を防染し花芯に見せています。
全体を茶、白、青に染め分けて、手間をかけてお洒落な着物を作り上げた熱意を感じてしまいます(^^)/

 白麻地 紅葉立木落ち葉模様 帷子 江戸時代19世紀
  

 麻ですから見事にシワが寄っていますが、季節を先取りして紅葉をあしらったお洒落な一品。解説によれば季節先取りは江戸時代中期以降に好まれだした習慣だそうです。


糊防染の跡が糸目状によく残っていますね。糸目糊と呼ぶにふさわしい感じです。

 白麻地 住吉浦風景模様 帷子 江戸時代19世紀


 刺繍と友禅で松原の風景を描いた帷子、大阪の住吉の浦だそうです。


 解説には、江戸後期になると庶民のあいだで物見遊山を楽しむ余裕が出て、全国の名所を描いた風景小袖が流行ったとあります。

 
 紫絽地 流水秋草鈴虫模様 単衣  江戸時代19世紀


 こちらはさらに豪華な夏の友禅。透けるように織られた絹地、絽(ろ)です。
やはり模様は季節先取りで秋草です。
紋付きの礼服で、解説によれば三つ葉葵の五つ紋だそうです。どんなご婦人の着用だったのでしょうか。

 海外からの観光客でにぎわう暑い熱い上野でした。


展覧会ルポ | 06:13 PM | comments (x) | trackback (x)

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