東京手描き友禅 模様のお話

 
東京手描友禅・模様の参考に

 10/11放送のNHK番組「美の壺」第290回「棚」は大変勉強になる内容でした。

 番組の解説によれば、大和言葉の「たな」は「水平」という意味、派生語は「たなびく」で水平に広がる」様子を表わすそうです。なるほど幅や高さは違っても棚の各段は必ず水平です。
 水平にたなびく雲や霧、靄(もや)などを霞(かすみ)と呼びます。霞が幾層も水平にたなびく様子から左右非対称の棚、つまり違い棚の様式が、日本で生まれたそうです。そういえば外国の家具に違い棚はあまり見かけません。
 霞をイメージした違い棚の好例として番組で紹介されたのが、修学院離宮でした。





   客殿床の間、脇床の霞棚 (かすみだな)

 本当に霞たなびく様子を表現したとしか思えない棚。美しいですね。
 修学院離宮は江戸時代初期、当時の粋を尽くした建築だそうです。今では和風の違い棚は何となく身近にあり見慣れたものですが、この霞棚などをお手本にして発達してきたとは知りませんでした。
 修学院離宮は拝観が自由ではありませんが、いつか見学したいものです。

 さて、霞棚の話からとびますが、もう一つ着物屋としての話題を。
番組のテレビ映像を見直していて気付いたのですが、霞棚の下にしつらえた物入れの戸の襖絵が なんと「張り手に掛けられた反物」です。
 拡大してみます。



 小襖の四面通しで 綺麗な反物が張り手で横に張られている図柄です。 
 掛かっている反物は豪華な模様の着物地なので、本当に洗いか染めのために張り手に掛けているというよりは、襖絵の絵柄として着物地を見せるために張り手に掛けた状態を描写したのでしょう。それにしても格式ある広間の襖絵に「張り手」が描かれているのは初めて見ました。
 屏風絵や襖絵に着物自体を模様として描く場合、衣桁に掛けた状態や、綱にかけて陰干しをしている様子などを図案化して描くことが多いのですが、反物の状態で、しかも張り手に掛かっている様子は珍しいのです。
 上部の霞棚が左右非対称に横に流れる線を強調しているので、下部の小襖の絵も横に流れる意匠として「張り手に掛けた反物」が選ばれたように思われます。
 霞棚と物入れ全体が調和して脇床ながら完全に隣の床の間を圧倒していますね。

 霞はご存じのように日本の代表的な文様の一つです。
友禅染では霞文様としてだけではなく花模様などと組み合わせて華やかな柄行きを作る役目も果たします。
 私は模様に霞が飛ぶ柄が好きで、よく用います。



花に霞が加わることで空間がイメージされて立体感が出ます。この霞は花と地色に合わせて銀霞です。



 こちらは色無地に金銀の霞と切り箔散らしをいれた着物です。
裾模様と上半身に絵羽で霞を流し、ぼかし染めで地色に濃淡をつけ、単なる色無地よりお洒落感を出しました。
 実はこの色無地は染直しの着物で、お客様の愛着のある色無地の着物を再度活躍できるように直したものです。工程の最後に仕上げで霞を入れる作業中の写真です。
 次回はこの「染直し」についてのお話です。

追記:続きは2013年10/28のブログ「ぼかし屋の染直し例」でご覧いただけます。

東京手描き友禅 模様のお話 | 09:32 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描き友禅の参考に。模様「格天井」について。

 久しぶりに箱根に行ってきました。曇りがちで富士山は拝めませんでしたが、涼しい芦ノ湖の遊覧船などを楽しみ、短いながらも避暑気分を味わいました。
 箱根の宮ノ下にある老舗の富士屋ホテルに初めて行ってみました。宿泊は予算オーバーなのでお昼にランチだけ楽しみました。お料理はもちろん美味しかったのですが、古い木材で作られたロビーやダイニングルームが特に素敵でした。
 このダイニングルームは天井の作りが格天井(ごうてんじょう)と呼ばれる様式です。窓や柱も立派で、そこにいて雰囲気を味わっているだけで十分ご馳走でした。


富士屋ホテルHPの写真より

 格天井とは日本建築の天井様式の一つで、格子に組んだ角材が天井板を支えるものです。神社仏閣など格式高い建築では格子で区切られた正方形のマス目のそれぞれに天井絵を描いてあり大変豪華なものです。
 多くの場合その天井絵が花鳥だったこともあり、格天井そのものが着物の模様の題材として使われました。格子で区切った正方形の中に四季の花々や鳳凰、向い鶴などのお目出度い模様を描くので格調高い柄行きになります。袋帯や黒留袖の柄に用いられることが多いようです。残念ながらぼかし屋には作例がありませんので、西陣織の織屋さんのブログからお借りした写真をご覧ください。


袋帯   梅垣織物さんのブログから
https://ameblo.jp/umegakiorimono

 梅垣織物さんのブログは掲載の写真が綺麗なだけでなく、織物についての説明が参考になるので折々拝見しております。この格天井の袋帯も本当に美しいですね。格子で区切っているために固くなりがちな模様ですが、柔らかい色合いの上品な袋帯になっています。パキッとした紺地の着物にこんな帯を締めたら引き立つことでしょう。
 この模様は西本願寺白書院の格天井を参考に制作なさったそうです。


西本願寺白書院

 建築だけでなく、着物の模様は日本伝統の色々なもの、扇や箱などの道具類、楽器、風景、家紋、四季などなど…を元にして作られています。これからも機会をとらえて模様のお話をしたいと思います。

 たとえば富士屋ホテルダイニングルームの窓には御簾がかかっていました。



 御簾も模様になるのです。次の機会に取り上げたいと思います。
それにしても素敵なダイニングルームでした。いつか宿泊してみたいものです。
東京手描き友禅 模様のお話 | 10:52 PM | comments (x) | trackback (x)

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