2022,05,05, Thursday
東京手描友禅、模様の参考に、友禅染の柄行きに
重い軽いという言い方をする意味は?
振袖の柄行きのお話が前回のブログでした。
全身に均等に模様があるより、模様の多い所と少ない所を作った方が、友禅染の振袖や訪問着は綺麗に見えるというお話でした。
上前の左胸や膝の辺りで模様を多くすると友禅染が綺麗に見えることは
「様式美」となっていて、
礼装の着物をデザインする時の原則のようになっているのでした。
本日はその続きです。

こちらはぼかし屋の訪問着。
全体に紅葉が流れていますが、紅葉の配置は原則通りです。
姉様畳みで
着装した場合の様子を想像しやすくした写真。
下前(右胸)には紅葉はありません。地色も衿を境に左右の胸で違う色(ピンクとベージュ)が向かい合うような配色です。
手描き友禅の誂え染めで柄行きを決める時、模様が多い部分を指して
「柄が重い」といいます。他にも
「この辺の模様を重くしよう」などと言います。
「少し重すぎるから、野暮にならないように軽くした方がいい」とか。
どの辺りに紅葉を多くして、柄を重くするかは本来は自由で決まりがある訳ではないのですが、やはり様式美を意識して友禅模様の
軽重を考えると綺麗に落ち着くのです。
裾模様。褄下の線を境に、写真右側が上前(着た時に前膝辺りにくる部分)左側は下前(上前の下に入り込む部分。歩くと見える)。
やはり模様の重いポイントや地色が左右で重ならないよう
互い違いになっています。
振袖や訪問着といった手描き友禅の着物は、
衣桁に飾れば日本画のように、着ると模様に軽重のある粋さが求められていると考えております。
理想ですね!
柄行きを考えている時に原則に戻って手直ししてスパッとはまると、伝統には勝てないなと思います。
(^^;)
東京手描き友禅 模様のお話 | 05:35 PM
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2021,09,19, Sunday
このところ訪問着のための
蘭の模様の図案を描いています。
全体に蘭の濃淡と、地色も淡いグリーンからクリーム色の濃淡にする予定。
なかなかに
苦戦しています(^^;)
何をと言って、蘭の形が決まらない…
昨日、ヨシ!と思っても、
今日、ダメだ…を繰り返しておりまして。

一度決めた姿を調整しています。

調整につぐ調整で、頭の中の完成図がグラつきます。(T_T)

少しずつ良くなっていると思いたい日々です。
関東はまだ暑さが残るものの、空気がカラッとして、しのぎやすくなりました。
引き染めに向いた季節がやってきます。
急がないと。
東京手描き友禅 模様のお話 | 10:33 PM
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2014,04,09, Wednesday
東京手描友禅 模様の参考に― 絵羽模様
着物の模様が、縫い目を境に途切れたりせずに、縫い目を越えて連続していることを
「絵羽模様」といいます。ぼかし屋の作品からひとつ例を挙げますと、

物語模様の訪問着
衽(おくみ)と前身頃、さらに後身頃の間の縫い目を越えて模様が連続しています。
友禅の中でも東京手描き友禅は一点物の誂えが得意なので、お客様のサイズに合わせて白生地をいったん仮縫い(仮絵羽仕立て)してから下絵を描きますから、このように模様を連続させることができます。
型染友禅の場合も、模様がつながるように型を配置するのは手間がかかることです。
さて!
先日NHKで再放送された京都迎賓館を紹介する番組で大変珍しい絵羽模様が紹介されていました。まずはこの写真をご覧ください。
何だかお分かりになりますか。
木目が絵羽模様になった障子の枠です。
一本の木から切り出した一枚板の木目を生かして切り分け、障子の枠に使ったのです。
驚きます!このような凝った作りは他で見たことがありません。
この障子のあるお座敷の様子です。
長く大きな座卓と座椅子の向こう、縁の廊下との間に障子があり、その枠の木目が絵羽模様になるよう気を使って制作されたわけです。障子を開け放った時に木目の美しさが絵羽で楽しめるように制作されたのです。なんという手間と技術でしょうか。
東京赤坂に昔からあるフランス式の迎賓館に対して、純和風の伝統を生かした接待をするために作られたのが京都迎賓館だそうです。外国からの賓客に出されるお料理も京都の有名料亭が回り持ちで引き受ける和食だとか。それにふさわしい建築であるために細かい所までこだわって設計され各分野の和風伝統技術が集められたとか。見学の機会はないでしょうからこの番組は貴重です。
建物については他にも様々なこだわりが紹介されていましたが、ここでは省略します。
ただ一点ご紹介したいのは番組のナビゲーターとして登場なさった女優さんの着物姿が素晴らしかったことです。
どなたもご存じのお二方が日本建築の専門家から説明を受けているところです。
番組の主役は迎賓館の美であってご自分たちではないこと、ただし最高の日本建築という場にふさわしい脇役でありたいと意識なさってお誂えになった着物だと思われます。
色無地と見間違うほどですが、お二人をよく見るとご年齢に合わせてお母様は裾に、お嬢様の方は胸元と背にも大変控え目に模様が配置され、格調高い雰囲気になっていました。模様は刺繍か染めか判然としませんが、古典的な綺麗な色合いの付け下げですね! 着物に詳しいお洒落な方ならでのお二人のプライドを感じる身仕舞いで、この番組の趣旨に大変良く合っておられると思いました。
感服、感服。
東京手描き友禅 模様のお話 | 04:23 PM
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