モナコ公国の手描友禅振袖 制作風景 20 江戸刺繍

 
モナコをテーマにした振袖の二着目の制作では江戸刺繍をあしらっていただくことにしました。
友禅は華やかさがある染め上がりになるので、多くの場合礼装や晴れ着となります。江戸時代に友禅染が発達する中で、友禅染に刺繍を合わせて豪華さを出した振袖、小袖が多く登場してきます。
で!このたびの制作の機会に、刺繍で仕上げていただくことにしたわけです。

お願いしたのは江戸刺繍の猪上雅也さん
以前、他の方の友禅作品にあしらわれた井上さんの刺繍を見て一目ぼれし、機会があればこの先生にお願いしよう!と決めておりました。

一番のポイントは、背の中央に先方(モナコ公国)のご希望で入れた冠の形に金糸をあしらって豪華にすることです。



下部に生地の端が写っています。刺繍の作業台に糸で括り付けてあります。


まだ本仕立てではないので生地の耳が写っていますが、刺繍上がりを背中心で合わせると、だいたいこんな感じ。ピンクの糸も入り、冠全体が紋所として立体的になりました。
大きな刺繍紋といったところですが、実際に着装すると帯に隠れ、衣桁に飾ると目立つ場所です。

刺繡は他に、王宮と国花であるカンパニュラにも。
写真の右端に、刺繍の作業台に生地の耳が縫い付けられていますよ!


モナコの王宮もともと海に面した岩山を利用して作られた中世の要塞だったとか。
要塞がぷっつり途切れていて形が少し不自然ですが、右端は縫い代に入るため模様が途切れております。

地中海に面したモナコの青い空と岩山はモナコの風景に欠かせない要素。
空に翻るモナコ国旗も刺繍でグレードアップ。





王宮のシンボルとなる中世以来の塔は、石造りであることを刺繍で表現していただきました。
やはり全体を同じ調子で縫うのではなく、強調部分に刺繍をお願いしました。


猪上さんご自身で撚りをかけて糸の色合いや光沢をお作りになっています。
拝見した時、そうそう!こんな風にして頂きたかったんです!(^^)!と思わず猪上さんに申し上げたのでした。


ググっとアップして、
小さい部分ですが、ここが王宮の入り口。写真で見ますと、実際は両側に兵隊さんが立ち、重厚でものものしい入口のようです。この着物では遠景を描いているので、入口も小さく、着物の模様ですから、可愛らしくしました。
金糸の飾りがぴったりです。


写真に写りにくい花芯の白い刺繍がよく見えています。
カンパニュラの花芯や縁取り。


手描き友禅では、「すべてを同じようにするのではなく、それぞれに違えて全体で見たときにきれい」を目指すので、そもそも花の色合いが少しずつ違い、金彩の有無、刺繍の有無でさらに違いをつけます。
全体で見た時に強弱がつくように、重要な位置の花を豪華にしてあります。


刺繍をいれていただいた王宮とカンパニュラの裾模様。
こんな感じで、とお願いした以上に美しい刺繍をあしらって頂き、ありがとうございました。
<(_ _)>

ぼかし屋の染め風景 | 05:02 PM | comments (x) | trackback (x)

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