東京手描き友禅 模様の参考に・菊の花

 
東京手描き友禅 模様の参考に・菊の花

 まもなく9月9日、重陽の節句。そこで今回は友禅染の代表的な模様である菊の花についてです。
菊の花には古来様々な表現方法があると思いますが、私は写実的でオーソドックスな表現が好きで、特に江戸琳派の画家、鈴木其一(すずききいつ)の描く菊が好きです。



菊図 鈴木其一 (ボストン美術館所蔵)

 菊の花が満開で花の重みでしなっている様子、花弁の白にほんのり紅がさしているところも綺麗で、花も葉も隙のない無駄のなさが美しいと思います。
 かなり古い話ですが、上野の松坂屋で 「ボストン美術館所蔵・近世日本屏風絵名作展」が開催された折の出品作なのです。もう一度観たいものですが、ボストンは遠く実現していません。昨年ボストン美術館の所蔵品展が日本の主要都市を回りましたが、この作品は来日しませんでした。松坂屋でも見た光琳の松島図などが再来日しましたが、この基一の菊図は地味な小品なのでかえって出品作に選ばれにくいのかもしれません。女性の居間にさりげなく置かれていたかと思うような小ぶりな屏風なのです。
 図録を確認しますと、松坂屋さんの創業370年の記念事業とあります。バブル景気の頃でしたから、百貨店業界もこれほどの催しをするだけの力があったということですね。

 同じ菊を描いて尾形光琳の場合の表現をご覧ください。



 尾形光琳 「四季草花図屏風」一部
 
 光琳の方がザックリ大胆です…が、私は鈴木基一の菊の方が好きです。まったくの好みの問題なのでご勘弁ください。
 でも同じ光琳の菊でも、こんな表現もあります。



 菊文様肩衣 

 このお饅頭のような表現の菊は「光琳菊」と呼ばれ、着物の模様の名称にもなっています。ザックリした菊の表現をこのように発展させるところは、さすがに天下の尾形光琳です。
 この光琳の影響を強く受けた江戸の画家が酒井抱一、その弟子が鈴木基一です。彼の生家は染色業を営んでいたそうです。図をそのままなぞって糸目糊置きできそうな整理整頓された其一の描き方はそのせいかもしれません。
 琳派の絵について生意気にも文章を書いてきて、最後に恥ずかしながらぼかし屋の菊の一例もご覧ください。HPにも載せた訪問着の一部です。気分だけは其一で描きました。






季節の便り | 10:56 PM | comments (x) | trackback (x)

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