東京友禅は、ぼかし屋友禅へ

 
東京手描友禅の染め道具 ぼかし刷毛
 反物に引き染めをする時に使用する刷毛は通常は五寸刷毛と呼ばれるもので、当ホームページのトップページにも写真があります。塗切りの染めだけでなくぼかし染めも五寸刷毛で行うのですが、特に不規則な感じのぼかし染めをしたい時には専用のぼかし刷毛を使っています。


 大中小あり主な色別に揃えたいところですが
高価なので青、赤系に大きく使い分けております。


 ふっくらと放射線状に毛が植え込まれています。束ねた毛の根本に砂を咬ませてギュッと縛り、このように綺麗に毛を立てているのです。


 まったく惚れ惚れする道具です。
 作る職人さんはもうほとんどいないとか。ケチケチと大切に扱っております。うっかり逆さにすると毛を立てている砂がこぼれ落ちてくるので、洗ったり乾かしたりする時も下向きにしておきます。

 最近この刷毛を使った時の写真です。
 最初にサッと大枠をぼかして


 さらにぼかし刷毛で細かくアッチ向いたりコッチ向いたりしたぼかしを加えます。


 刷毛に含ませる染料の量を違えることで濃淡をつけ、ぼかし刷毛をどのくらい生地の上を走らせるかでも濃淡をつけます。

 今回はザックリと葉っぱのイメージで、さらに色を加えます。


 数種類の緑色と黄、グレーを使いました。


筆描きした葉の上からぼかし刷毛でこすると葉の境目が柔らかく滲みます。



 緑系の色目で染め上がった模様となりました。
東京手描友禅の道具・作業 | 11:01 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅 模様の参考に、五島美術館の秋の展示「絵画、書跡と陶芸」に行ってきました。



一番の目当ては紫式部日記絵巻。
現存する物語絵巻類では最も古いだけあってかなり退色していますが、引き目鉤鼻の公達や女房たちが上品で静かに美しく、何度見ても見飽きません。


 中宮彰子が男子を産み、女房たちが正装でかしずいているところ。
 解説によれば女房の髪型は正式に前髪を結い上げているそうです。確かに額の上に摘み上げたように髪が上がっています。平安時代、女性はお下げ髪が基本ですが、正式な場面では奈良時代の女性のように前髪を高く結って飾りを付けたそうです。


 中宮を訪問した公達を紫式部が迎えているところ。
 西洋絵画で「○○を訪問する△△」というタイトルなら、訪問される側、訪問者ともに従者を従えて画面中央にドンと描かれるものですが、この図はポイントが右によっていて、位の高い中宮様は大きな屋敷の奥深くにいることを匂わせているだけ。とてもとても日本的ですね!
 ハッキリ表現せずに、良くも悪くも間接的に「ほら、わかるでしょ」と伝える日本風の原点のように思います。


 静かで上品に見えつつ実は儀式の後のくだけた宴会の様子を描いているそうです。
 盃片手に歌う人、女房の容姿や衣装を品定めする人、「この辺りに若紫さんはいらっしゃいませんか」と美男の誉高い公達が紫式部を探していたり。
今も昔も「打ち上げ」は楽しいひと時ですよね!

 尾形乾山の屏風絵の展示もありました。


尾形乾山 「四季花鳥図屏風」 左

                 右
 陶芸が有名な乾山の、これほど大きな絵画は初めて見ました。さっくりソフトに描いた感じ。

 特にきれいだったのは、輪郭を描かずに胡粉の白をぼかすことで姿を表現した白鷺の群れ。真似てみたいものです。

五島美術館はお庭も有名なので一巡りしました。

ムラサキシキブの花 ちょうど今が季節なのですね。

立派な寿老人。思わずお参り。

古墳があるとは知りませんでした。

名前が分からない花。受付の女性に尋ねましたが、「え~っと、何でしたっけ!忘れてしまいました」とのことでした。(^^;)
どなたかご存じの方、お問い合わせフォームで教えてくださいませんか。

※追記 2014/12/11
教えていただきました。エゾツリバナ(蝦夷吊花)だそうです。
秋に赤く熟した果肉と種子を採取するそうです。薬効もあるとか。

展覧会ルポ | 05:33 PM | comments (x) | trackback (x)
 友禅染の創作用の白生地には縮緬や綸子といった織り方の種類以外に、白い絹糸だけで織った生地か金銀の金属糸を織り込んだ生地かという種別もあります。金糸を織り込むと「金通しの生地」という呼び方をします。他に銀通しもあります。
 師匠の家に通っていたバブル経済の頃、本物のプラチナを織り込んだという生地も見たことがあります。(見ただけ(^^;)触ってもおりません~) 
 それはさておき…本日は同じ種類の模様を図案と生地を変えて染めた例がありますので、金通しと普通の白生地で染め具合がどのように違うかご覧ください。
 素人写真ですが、なるべく違いが写るように撮影いたしました。



制作に使用した生地。左が金通し。右が普通の白生地。地紋は同じ。

 金属糸の織り込み方によりますが、それほどピカピカ光るわけではなく、金通しならベージュに、銀通しならグレーに落ち着いて見えたり、光の加減によって光って見えたりします。



地染め。下が金通し。まったく同じ染料ですが、金通しの方が少し柔らかい感じがします。
辛子色の濃淡が三段階に出るようにぼかし染めを二回に分けて行っています。


  普通の白生地の方(上)


  金通し生地の方

 色挿し




 色挿しの出来上がりを見比べると濃い色の所ほど金糸がよく見えます。
金属糸は染料で染まらないので、同じ色で染めても金通し生地の模様の方が少しボウッとした感じに仕上がります。


金通しでない生地の模様には薄く金霞を加えて華やかさを出しました。


染め上がり。左の普通の白生地の方が色は鮮やかに見えます。


金通しがよいかどうかはお好みや、模様との相性によります。この作品例は帯地ですが、訪問着など着物そのものが金通しの場合は、お召しになった方の動きに合わせて光沢が出て華やかになります。
礼装というよりはパーティなどお洒落着に向くようです。


お太鼓に結ぶとこんな感じ。垂れ先にも辛子色の濃淡が出るようにぼかし染めしてあります。

金属糸をどの程度表に織り出すかは地紋のデザインによりますが、多くの場合表より裏に多くの金属糸が出てるため裏側の方が表より光って見えます。


ちなみに、このように裏にも表と同じように染料が染み透っているのは、
模様の色を手仕事で一つ一つ筆で色挿しした生地の特徴です。
ぼかし屋の作品紹介 | 09:55 PM | comments (x) | trackback (x)
 今までこのブログで話題となった「着物あれこれ」の中から、
最近実例を見かけた着物姿を2例紹介します。

その一
 昨年2013年4/27日のブログで取り上げた「腰巻姿」を、思いがけず映画で見かけました。



 「雨あがる」山本周五郎原作の一場面

 さほど大きくない大名家の殿様と奥方がくつろいで話をしているシーンです。殿様はお酒を飲みながら奥方に愚痴めいた話としています。お酌しながら聞いてあげている奥方が腰巻姿です。袴に見えるかもしれませんが、ブルーの小袖の腰に紺色の打掛を巻きつけています。立ち姿の場面がなく残念…。



 簡単にまとめただけのお下げ髪なのが印象的です。ブルーの小袖の燕子花の模様は写実的な友禅染め。燕子花の下は金箔があしらわれて華やかです。打掛は紺一色に見えます。立ち歩くと紺色の裾からさらに白地に燕子花や金箔の小袖がのぞくはず。すてきでしょうね!
 江戸時代を舞台にした時代劇では、身分ある女性はみな打掛をガウンのように羽織った姿で登場しますが、この映画の衣装担当の方はどんな意図で腰巻姿にしたのでしょうか。今では完全に廃れた着用方法ですが、能や歌舞伎では、よく似た着付け方法を見かけることがあります。

その二
2013年11/26のブログ「宮廷服の礼装」でご紹介した「袿袴(けいこ)姿」
伊勢神宮の遷宮の儀式で天皇家長女の黒田清子さんがお召しになっていました。



  家庭画報 2014年1月号より

 この写真が横から撮影されているので、袿(うちき、上から羽織るもの)と袴のボリュームがよく分かります。着用するとこんなに大きいのですね!この袴で歩くのは大変そうです。
さらに白い上着を羽織っているのは、おそらく神事への参列だからでしょう。袴はくるぶしまでの長さで引きずりません。
 この写真でもう一点面白いと思ったのは一番左端に写る男性の足元です。古くからの沓でも草履などの履物でもなく、大きな写真で見ると子供用運動靴のような白い靴を履いています。動きやすくて狩衣にも合うように現代になってからデザインされた物に見えました。実用的ですね。

2014/10/10追記
 先日の千家典子さんの結婚式の日に花嫁一同が出雲大社境内を歩く様子が報道されました。


         毎日新聞電子版より

 おや珍しい!袿袴姿ですね。報道各社で衣装の呼び名が違うようでしたが、
NHKでは「袿・切り袴」(うちき・きりばかま)と呼んでいました。  
 風で衣装があおられている分、足元がよく見えます。
袴の下は西洋風の靴。束帯姿の花婿は沓をはいています。
 花嫁は儀式そのものでは袿に長袴。(小袿姿)おはしょりしない袿と長い袴を優雅に引いて歩かれたようです。今回たまたま花婿が神職だったので、袿袴姿で境内を歩くという光景が見られました。
 こうして見ると袿に袴は意外に実用的な感じもしますね。
裾が広がらず帯も重い現代の着物より…。

着物あれこれ | 10:50 PM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の作品紹介 染め名古屋帯

 手描き友禅の染め帯作品を、染め風景とともにご紹介します。



 白生地の下絵に糸目糊置きしたもの。名古屋帯の前の部分なので生地の半分を境に模様を上下させて配置します。



 先に地染め。ピンクと藤色で染め分けした帯になります。





 色挿ししているところ。
 手描き友禅では液体の染料を筆で直接色挿しします。糸目糊で防染していても、はみ出さずに色挿ししても時間が経つと糸目を越えて染料がはみ出しやすいのです。ですから少しでも早く乾くよう生地にかるく熱気をあてながら色挿しをします。
 花びらに濃淡をつけるにも薄い色を先に挿して少し乾いたところで濃い色を重ねぼかしすると綺麗に出来上がります。ニクロム線の熱源は縁の下の力持ちです。







 同じテーマで二作染めていますが、色の挿し方を変えています。



 花びらの色。合計9色使っています。



染め上がり。



 仕上げで銀色をあしらいました。色挿しが華やかな方は渋い銀で。



 落ち着いた色挿しの方は輝きの強い銀色で。

 九月。菊酒造りのために菊の花びらを振り散らしているところをイメージしました。
先週ご案内した「しゃれ帯展」に出品予定です。

ぼかし屋の作品紹介 | 11:12 PM | comments (x) | trackback (x)
染め帯 展示会のお知らせ

東京手描友禅の先輩方にお誘いいただき、染め帯の展示会に数点出品いたします。
東京都染色工芸組合に参加する手描き友禅作家グループの創作染め帯の展示です。

 東京の友禅?どんなもの?など興味をお持ちでしたら、
この機会に会場にお立ち寄りくださいませ。
 今回のテーマは「酒」 テーマ以外の画題の作品もございます。


しゃれ帯展
ギャラリー サロン・ド・フルール

9月23日(火)~9月28日(日)

東京都港区南青山5-7-25
ラ・フルール南青山 1階
TEL 03-5485-8748

アクセス→ 東京メトロ 表参道駅B3出口より徒歩3分



※案内状の写真は東京手描友禅作家、佐藤洋宜さんの染め帯です。
お知らせ | 10:11 PM | comments (x) | trackback (x)
 子供の頃、父の京都土産の絵葉書に写っていた舞妓さんを見て以来、お引きずりの振袖姿に憧れていました。だらりの帯、びらびらの簪にも。
 本物をじっくり拝見する機会もないまま今に至りますが、一番の興味はやはり着物。特に裾を引きながら軽々を踊ったり歩いたりする着物はどんな構造なのだろうと。



 踊っても裾の返りが綺麗なので、小袖と打掛のような重ね着ではないと想像していましたが、思いがけずNHKの番組「新日本風土記」花街・祇園で答えが分かりました。
 男衆さんが舞妓さんに着付けをする、一分ちょっとの場面に振袖の裏側が写ったのです。



 畳んであった振袖を手に取りサッと広げる瞬間。裾のフキが厚いですね。ピンクの表地の内側に黄緑の中着が見えます。これがどうなっているかが疑問だったのでした。



 男衆さんが両手で衿を持って振袖を広げました。襟が※比翼仕立てで重ね衿になっています。



 舞妓さんに後ろから羽織らせるために広げてさばいています。ほら!裾も比翼仕立てです。
やはり二枚重ねではなく、一般の黒留袖と同じように比翼仕立てなのですね!なるほど。
しかし黒留袖の比翼でも十分重く、仕立てるのも大仕事なら、ズッシリした絹の重みで着るのも楽ではないのに、これほど厚くフキが入っている比翼の振袖を着こなすのは大変そうです。
胴裏と裾回し、比翼との境なども一般の着物と比べ特に違いはなさそうです。

 ピンクの表地に黄緑色で模様のある襲ね(かさね)は春の取り合わせですね。 
 


 背中心だけ慎重にあてて位置を決めた後は…







 衿からスッと沿わせて肩山の位置は一瞬で決まっていました。



 最後に帯結び。
 舞妓さんの着付けは男衆さん(おとこしさん)の仕事で実質的に世襲だそうです。ほんの数分で舞妓さんの着付けが出来上がるとは驚きました。伝承技術なのですね。
 周辺にある棚や着物ハンガーなど一般家庭でも使うような物たちも見えてちょっと親近感。



 芸妓さんの黒の礼装一式。帯板や紐類など私たちも馴染み深い形ですが、衿も大きく襦袢を含め全体にフキが厚く重そうです。
 いつの日か舞妓さんをじっくりと拝見したいものですが、残念ながらまず機会はないことでしょう。一見さんお断りの世界なので。
 思いがけず舞妓さんの着物の裏側を見ることができて幸運でした。

※ 比翼仕立て
 正装の着物は元々、二枚襲ね(重ねること)で着用するのが正式でした。留袖なら黒い表着の内側に白い下着を重ね合わせてから袖を通して着たそうです。
 これでは重くてかさ張り、動くと着崩れしやすいので、時代と共に簡略化され、二枚がずれないよう下着を表着に縫い付け、しかも衿と裾部分だけになってきました。これを比翼仕立てと呼んでいます。
 色留袖ですと裾も省いて比翼衿だけ付けたり、訪問着にお洒落のため比翼衿を付けることもあります。伊達衿は比翼衿をさらに簡単にして取り外しがきくようにしたものです。

 比翼という言葉は二羽の鳥が仲良く翼を並べているところを表わすそうです。夫婦仲のよいことの例えだとか。着物を二枚重ねているように見せる仕立て方法なので、いつか誰かが比翼仕立てと呼ぶようになって一般化したようです。
(各種着物関連図書を参考にしております)

2014年5月25日のブログ「東京手描友禅の色留袖、几帳模様の色留袖」 にて比翼仕立ての色留袖を作品例として紹介しています。舞妓さんの着物と違いフキは薄いのですが、構造は同じです。
裾回し、比翼が写っておりますので、ぜひご覧ください。



着物あれこれ | 12:20 AM | comments (x) | trackback (x)
 東京手描き友禅の地染め(模様以外の地色を染めること)は「引き染め」といって刷毛で生地に染料を染めつけます。型染や浸し染より色ムラが起きやすいという難点があります。絹地がどこも均一にたっぷり染料を含み、ムラなく染まるように、染料で染めるより先に糊を絹地に塗ります。それを地入れ(じいれ)と言います。
 今日は地入れ作業をしたので写真を撮ってみました。
友禅の染め工程を紹介する場合、長くなり過ぎるので大抵省かれてしまう工程の一つが地入れなのです。


※まず生地を端縫いかけして、張り手にはる準備をします。
点前に写っているミシンは今年3/13のブログで紹介した剥ぎ合せ専用ミシンです。


※ これがフノリ。乾燥させた海草です。この位が訪問着一反分の量です。


※ 水に戻したフノリをさらに煮溶かしてトロトロの液状にします。


※ フノリは日本手ぬぐいで濃します。隣に写っているのは地入れに使う刷毛。刷毛は事前に水に浸して木にタップリ水分を含ませてから染色作業に使います。カラカラに乾いた刷毛を水に沈めると木が「あ~やれやれ」とノビノビする感じがします。


※ 漉すといってもなかなか手荒な作業です。日本手ぬぐいを親の仇とばかりにギュ~っと絞って中のフノリをバケツに絞り出すのです。


※ 絞った後で手ぬぐいを開くとフノリの固い繊維がたくさん残っています。漉しが甘いとこの繊維が生地についてしまいます。


※  水を加えてフノリの濃度を調整します。
濃い色を染める時には呉汁(すり潰した大豆を漉した汁)も加えます。
さて準備完了。生地を張り手で張って地入れします。あとはひたすら均等に手と刷毛を動かして絹地に糊を吸ってもらいます。


フノリ地入れが乾いてパリッとした絹地は染料の染付けがよくなります。

東京手描友禅の道具・作業 | 01:21 AM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅 模様の参考に。「日本絵画の魅惑」展
 出光美術館の「日本絵画の魅惑」展で、地色を大胆なぼかし染めした着物の浮世絵が展示されていました。(写真は図録から)



  喜多川歌麿「娘と童子図」

 前回のブログで地色を裾濃(すそご)に染めると着映えがすると紹介しましたが、この図は逆。上半身ほど濃い緑色に染められています。これもステキですね!
娘さん用にしては地味な濃いお抹茶色ですが、衿や裾、袖口からのぞく真っ赤な小袖がアクセントとなって若さを引き立てています。胸元の帯の近くは白場を残した染なので、染める立場からすると、ぼかす個所が多くて引き染め作業はなかなか大変。やり甲斐ありそうです。



 懐月堂安度「立ち姿美人図」

 グレーの地色が、前記の歌麿と同じく上半身ほど濃く染められています。こちらの方が粋な大人の女性の感じ。下襲ね(したがさね)はやはり赤。渋い表地と赤の組み合わせは他にもたくさん見かけました。人気の色合わせだったのでしょうね。
 渋さの中に赤が少しあると全体がとても調和する例は、誰しも心当たりがあると思います。
例えば石造りのロンドンの街に赤い二階建バスがよく合うというような…。
 この図はもう一か所 興味深いところがあります。
この女性は髷(まげ)を自分で結い上げているところなのです。
 


 後頭部で縛った髪の束を左手で持ち上げ、右手で持った櫛で束の先を前髪後ろに留めようとしているのです。左手の指が髪をからめとって櫛に咬ませようとしていますね。
 女性の髪型は江戸の後半に島田結いなど大変複雑な形に進化しましたが、女性の風俗史によれば桃山期から江戸初期には、簡単に髪を束ねてお下げにしたり、ポニーテール風だったり、それをお団子にまとめたりと比較的単純な髪型だったそうなのです。
 この女性は、髪結いさんにまかせるのではなく自分で加減しながら髷を作っている真っ最中。
集中していますね。


展覧会ルポ | 11:30 AM | comments (x) | trackback (x)
東京手描友禅の振袖 「貝桶文様振袖」
ぼかし屋の作品例として、貝桶や牡丹の模様の振袖を紹介いたします。



① 貝桶文様振袖 衣桁にかけたところ。

 お嬢様とお母様、お二人のお話を伺って図案を構成いたしました。
「何か古典柄を」というご希望に合わせ、婚礼道具の貝桶を中心に牡丹や菊などを彩りにした柄行きです。地色はお好きなサーモンピンクの濃淡と淡いクリーム色のぼかし染めです。



  ② 模様の一部を拡大したところ。

 生地の地紋(生地自体に織り出されている模様)は振袖ならではの華やかな牡丹唐草です。貝桶表面の模様に地紋と同じ形の牡丹唐草を用いました。このように地紋を利用して友禅模様を染めだすことを「地紋起こし」と言います。
 せっかくの誂え染め。何かに因んだ模様であったり、いわれがあったりすると楽しいものです。
「大人っぽい雰囲気」がご希望だったので模様は全体に落ち着いた色合いです。



  ③ 貝桶文様振袖 姉様畳みにしたところ。

 着物を紹介する時は写真①のように衣桁に掛けて背中側から写すのが一般的ですが、本来は帯に隠れるはずの背中部分が写真の中心になってしまい、着用時のイメージを掴みにくいという欠点があります。
 ぼかし屋ではお客様にご覧いただく時に、写真③のように姉様畳みをよく利用しております。実際に着用した時の着物の柄行きや色取りが分かりやすいためです。
 ぼかしの染め分けを利用して、上半身の上前はサーモンピンク、下前(右胸側)は淡いクリーム色に染めました。片身替わりの着物のような効果で、着用時に立体感が出ます。
 この振袖のように裾へ行くほど地色が濃くなる地染めを「裾濃」(すそご)と言います。たとえば気軽な付け下げなどの場合でも、地色が裾濃になっていると立ち姿が映えます。



  ④ 上半身の拡大

 左の前側(上前)には衿から袖先まで絵羽で模様が連続しています。それに右袖の後ろ側も身頃から袖先まで絵羽模様になっていますので、お召しになると、「お花がたくさん」です。
 全体の色のバランスを良くするため、袖の地色にも濃いサーモンピンクやクリーム色が使いました。落ち着いた色合いの模様に、ぼかし染めで三色に染め分けた地色の効果で、明るい華やかさのある振袖となりました。
 創作一点物ですから、ご注文下さったお客様だけの色、柄行きです。 このページにはお客様のご了解をいただいて掲載しております。
 この振袖の制作工程もいずれ紹介したいと思います。
ぼかし屋の作品紹介 | 11:28 PM | comments (x) | trackback (x)

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